南ヨーロッパの素敵な海辺の現実

南ヨーロッパの代表的な国でまず思い浮かぶのはイタリアであろう。地中海・アドリア海・ティレニア海に囲まれた温暖な気候の地域で、特に南イタリアは文化的多様性がおそらくヨーロッパでもダントツな地域であり、日本国内でも知れ渡っている通り食文化も非常に多様である。いや、日本人が想像するよりも多様といってもいいかもしれない。というのは実際私が各地を旅行したりした経験から言うと日本でもあまり知られていないような料理を発見することがたまにあるからだ(また当然彼らも新しい料理を開発する。別に伝統的のものばかり食べているわけではない)。

他の南欧といえばスペイン・ポルトガル・ギリシャが思い浮かぶであろう。これ等の国は文化的多様性はイタリアほどではないと感じるが、やはり南欧らしい気質の明るい人たちと美しい海外線があり、観光客に人気の地域である。さらに最近知れ渡ってきている国にクロアチアそしてアルバニアなどがある。クロアチアは海はきれいだが実はそれほどビーチは無い。しかし経済的には典型的な東ヨーロッパの後進国でありそのため物価が安いため、EUに加盟する前からも一部の西ヨーロッパ人にとって隠れた人気の旅行先であった。距離的にも西側ヨーロッパの裕福な国から遠くないためイタリアなどの観光地に飽きた人たちが訪れていたようだ。EUに加盟してからはさらに行きやすくなったため、今では「隠れた観光地」という状態から脱してヨーロッパ人にある程度は知られた観光地になっている。

誰しもこういった国に訪れてみたいだろう。日本でも海外旅行の情報誌にはこういった地域の素敵な写真がたくさん載っていて、旅行に行った人は必ずと言っていいほどSNSへ投稿するもので、その総数を見てもやはり南欧というのは人気の観光地であるのは間違いない。また何もこれらの地域が人気なのは日本人だけに限ったことではなく世界中の人々に知れ渡っている人気の場所だ。が、数日訪れただけではわからない実態がある。それに気づく人はどれだけいるだろうか?それは日本の観光地に住む人のみがが実際そこに起きている観光地の負の側面を知っているのと同じことである。

とても美しい風景と思える。しかし海上に浮かぶ多数の船を見て何か感じることはあるだろうか?

その一つは南欧の海沿いの素敵な風景とは裏腹にほとんどの場所の自然は破壊されているのである。いや破壊されている、というのはいささか強すぎる表現ではあるが美しいコバルトブルーの海が広がっている地域であっても、同じ場所で長く滞在しているとふと気づくことがある。それはあなたがどんな自然環境で育ったかにもよるが、子供のころから「自然が豊か」とされるようなところで過ごした経験があるなら気づくかもしれない。実はこういった海の風景が素敵な南欧の地域で感じることが多いのが、昆虫や魚が少ないことである。確かに海はきれいなのだが、海の色が綺麗だからといってそこの自然が豊かであるというわけではないのである。少し調べてもらったらわかるが南の海が青くて透き通っているのは自然が豊かというよりは、海中のプランクトンが少ないのと太陽光が強いからであり、そこの生態系が健全であるとの関連性には直結しない。一方寒冷な地域の海はやや濁っていることが多いが、これは汚れているのではなく海中にプランクトンなども含めた有機物が多いためである(無論それとは別に大都市近辺の海は汚れているが)。こういった南欧の海沿いは観光地化されており、表面上はゴミも少なくきれいなのだが観光地であるため、特に夏は観光客が増えることであちらこちらが踏みつぶされ、人の足影の影響から逃れられる場所が少なく小動物がその地域からはいなくなるのである。
また海もその美しさに比べると魚も含めた生き物が少ない。南欧の地図を見てもらえば一目瞭然の事であるが地中海という陸に囲まれた小さな海であり、またヨーロッパの国々がひしめいている人口の大きな地域でもあるために海の資源は簡単に少なくなりがちである。もちろんEUは世界でも自然環境に関する規制が多い地域なので海の生態は周辺人口の凄まじさ考えるとかなり健全に保たれているほうだろう。しかしそれでも海辺で見られる生物は貧相なものである。自分の足で少し歩いてもらえばわかるがとにかく昆虫類が少なく、日本の綺麗な海沿いなら普通にいそうな海岸にひしめく「磯の生き物」的な生物も見つけにくい。私は釣りも楽しむのだが、魚はいるが海の綺麗さに比べて実際吊り上げられるの小さなサイズの魚のことが多く、要するに魚類は漁業を通してしっかりと捕獲されているので大型の魚が少ないということがわかる。先ほども言ったようにしっかりと掃除はされておりかつ海も綺麗なので、自然が豊かだと勘違いしそうであるが実際は管理しやすい植物ばかりが生えている一方、昆虫、動物、魚類は少なく、実に貧相な環境なのである。

またこういった素敵な海辺の南欧というのはかなり物価が高い地域である。スペインやポルトガルなどの片田舎の海沿いにはそれほど物価が上がっていない場所もあるが国の経済力を考えると相対的に高い箇所が多い。なぜか? 理由は簡単で北西部の裕福なヨーロッパ諸国の人間が買い漁った結果である。とくにEUとなり単一市場となってからはそれが加速して、裕福な寒い北側ヨーロッパの一部の人々が投資目的も含めて南欧の素晴らしい地域の土地や家々を買い漁るため物価や地価が上がってしまうのである。その結果の一つに南欧の観光地化された(投機対象となった)地域の経済はますます観光業に傾き、経済は貧弱なものになってしまうという事が挙げられる。これらの地域では裕福なヨーロッパ人が夏にやってきて金を撒いていくので勤勉な生活意識が必要となる各産業が発達しにくくなってしまう。温暖な地域の人たちはよく言えば穏やかで楽天的、悪く言えば適当で怠け者である傾向がみられるが、このような投資による観光業の発展によってさらに観光業に依存する怠け者が増えてしまうのである。

南の青い海とそこに浮かぶ素敵なセーリング船(つまり日本で言うヨット)が浮かぶ光景は絵葉書やポスターにも使われる光景である。なんとも情緒がある景色であるが現実的に考えてみよう。当たり前のことだがこれらの海辺に住む地元の人たちはこんな優雅な船を基本的に必要としない。漁業に使われる船はもっと実用的な風貌である。これら素敵なシルエットを持つ美しい船はほぼすべて観光用のものであり、つまりこの記事の冒頭にある美しい海辺の風景というのは地元経済と密着した自然な光景ではなく、あくまで観光客がいるからこそみられる、ある意味人工的な光景なのである。私が言っていることは当たり前だという人もいるかもしれないが、ここで言いたいのは南欧の海岸沿いの美しい洗練された風景というのはその大半は人工的に演出されたものといっていい。さらに日常を忘れるために訪れる開放的な気分の観光客によって美化されたものともいえるであろう。

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