ルクセンブルクについて

あっちこっちに飛び回ることが多いため同じ場所に毎日いるわけではないが、一応ルクセンブルクに住んでいる。この国について私の経験上からの話をしてみよう(2019年現在)。

ルクセンブルクは人口60万人ほどの何とか「国家」と呼べているような小国だが 最近少し有名になっているようだ。何も日本人の間だけの話ではなく、欧米先進国の人達の間でもルクセンブルクと聞いてすぐに何処にあるかを説明できる人は少なく世界的に見ても名の知れた国とはいえない。以前よりは若干知られつつあるとはいえ知らない人もまだ多く、今後も誰もが知る国になっていくような感じではない。とは言えいくつかの点で特筆される国と認識されているので、これらについて統計だけからは見えてこない実際の生活から感じることを話してみたい。

まず検索すると真っ先に検索候補として出てくるのが「金持ち」の国という事である。

Googleでの検索候補(2019年現在)

一人当たりのGDPを調べてもらえれば分かるが年によって順位が変動するとは言え、大体世界ランキングの上位3位の中どこかにいる。これだけを見るとまさに3本の指に入る金持ちの国というわけだ。では実際の体感としてはどうか?統計の上では間違いなく裕福な国だが、間違ったイメージを持っている人も多いかと思う。例えば金持ちといっても金銀財宝を身に纏ってフェラーリやロールスロイスをを乗り回す人がそこらじゅうで見られる、という訳ではない。そういうのは石油産油国やニューヨークの中心街などではあり得るがここルクセンブルクではそういう事は稀である。確かに車を見るとたまに超高級車も走っているがしかし決して多くはなく、むしろ全体的に目にする車はいわゆるミドルアッパークラスとされる類の車が圧倒的に多い。そこそこの高級車であるが日本円で1000万を超える車はほとんど見かけない。要するに中の上、もしくは上の下の収入の人たちが多い国であり、生活スタイルも堅実なことが多いのである。

では都心部の雰囲気や娯楽についてはどうか。金持ちとして名をはせるようになった国だが実際この国にはあまり娯楽がないためそれについて文句を言う移住者が多かったりする。都心部とされるのは中央駅周辺、Hamilius地区、Kirchberg地区を線でつないだ地域沿いであり、これらの場所にはレストランやスポーツジムショッピング街などがにぎわっている。しかしこれら3か所はそれほど規模が大きいわけではなく、少しでも外れた場所に行くと途端に人通りは少なくなるか、静かな住宅街になる。

娯楽や飲食店について

例として飲食店について具体的見考えてみよう。ルクセンブルクの人口当たりのミシュラン認定レストランは世界一、二位を争うがというが、これはあくまで人口比の問題であって、そもそも母数としての人口が少ない国なのでこの様な説明はあまり意味がない。実際のところルクセンブルクの土着の料理はドイツの田舎料理とほぼ同じでジャガイモ、豚、牛がメインであり現地人の舌の肥え方もそれに合わせたものだ。そして値段は比較的高い割にはあまり美味しいものはない。東京も物価は高い、しかし安くても美味しい料理がたくさんがあると考えるとルクセンブルクでの外食は高くて普通もしくは普通以下なので平均化して考えると間違いなくルクセンブルクの飲食店のレベルは東京よりも格下である。
もちろん美味しい店も十分にあるのだが町の規模を考えると絶対数が多くないので行きつけの店が決まってくる。例えば喫茶店についておすすめの店を人に聞くとGolden Bean、Knopes、Chocolate House、Konrad、Kaale Kaffi、Oberweis、Readyのうちのどれかが返事として返ってくる。これ以外の喫茶店も当然あり、私の知らない喫茶店もたくさんあるが、「おすすめはどこ?」という事になるとほぼ必ずだれもがこれらの店を勧める。翻ってニューヨーク、パリ、または東京や大阪ではどうか?これらの地域に住む人におすすめの喫茶店を聞いても各人それぞれ違う答えをするはずで、おすすめの喫茶店が被ることはあまりないだろう。何が言いたいかというと、娯楽面を喫茶店というごくありふれた例を見るだけでもこの国が幾分かつまらない国であることを証明している。いや、つまらないとは言いすぎかもしれない、少なくとも私個人的には特に不満はないのだが他の都市と比べると間違いなく娯楽は少ないであろう。

食文化について言うと一方面白い側面もある。歴史的にポルトガル人やイタリア人が多く住み着いたという事もあり、彼らの嗜好に合わせた南ヨーロッパの料理もチラホラある。特に特殊な事と感じるのはルクセンブルクは地理的に見ても西ヨーロッパのど真ん中にある海から離れた典型的な大陸ヨーロッパのはずだが、不思議なことに海産物がスーパーで手ごろな価格で売られている。それは先ほど言ったようにポルトガルやイタリアの移民が過去にこの国に来たことによる影響であろう。また最近は他の国からの移民も多く、多様な食文化が見られようにはなっている。ただしこれはあくまで都心部の限られた場所だけの話ではあるが。

いくつかのショッピングモールではかなりの種類の魚介類が売られている。

ショッピングの話をするとこれもまた面白い発見がある。ルクセンブルクの繁華街の一つHamilius地区はさっと見る程度なら30分もあればほぼすべてのエリアを歩き回れる程度の広さだ。しかしこの小さな地区に高級ブティックが並んでいるのは意外に感じる。グッチやルイヴィトンの様なメジャーなブランドの店舗は売り場面積が小さめとはいえこの小さな繁華街に所狭しと店を構えており興味深い。観光客の多さというだけならすぐ近くのドイツ国境沿いにあるトリーアという街もルクセンブルクと同じかそれ以上に観光客が訪れるが、ルクセンブルクにあるような高級ブティックは何一つ無いのだ。人口も少ない小さな国の小さな町ではあるがルクセンブルク市は一応首都であり、そのため国際的な高級ブティックが店を構える動機にはなるであろう。そして実際にこれらのブランドを買うことができる人たちが住んでいるという事も大切で、トリーアの地元のドイツ人とルクセンブルク人とは購買力に2倍以上の開きがあるので表面上は同じように繁華街が賑わっていても、経営者の視点ではどちらの地域に店を出すべきかについての答えは自明である。

観光地

ルクセンブルクの見どころは何があるだろうか?観光情報を見ればいろいろ書いてはいるが、ヨーロッパ諸国をあちこち住んだり旅行をしてきた身としてはこの国に特有の観光資源というものは正直あまり無いと思っている。いくつか挙げるならば都心部は深い谷がありそれを含めた光景は独特なもので美しい。だがそれ以外に何があるかと言われるとこれといって特別なものはないだろう。前述のように多国籍な食文化があるとはいえ観光客が一番興味を持つであろう肝心の地元の伝統料理はさほど美味いとは言えない。自然が豊かといわれることもあるが、確かに緑は多く感じるがそれはただ単に田舎なだけでそんな地域は他のヨーロッパにも幾らでもある。田舎と表現するか自然が多いと表現するかは口先だけの言葉遊びであり、日本人の事を短足チビと言わずに可愛らしい人たちと表現するのと同じである。自分の住んでいる場所なのにつまらない事を言うのも気が引けるが、観光という部分だけで語るならヨーロッパにありふれた地方都市のひとつという程度であろう。

ルクセンブルクの外国人

ルクセンブルクは外国人が多いという事で有名である。統計上でもEUの中ではトップクラスに外国人の多い国とされていて確かにルクセンブルク市とその周辺地域にはかなり多種多様な国籍を背景に持つ人たちがいるようだ。一方これら外国人の大半は周辺国から来る労働者たちであって、要するにフランス・ドイツ・ベルギー人などがほとんど。とはいっても統計のとおりこれらの国以外から来た外国人が多くみられるというのは実感としても正しい。また面白いことにこれら外国人たちは経済的な後進国から来た人たちであっても比較的教養の高い人たちが多く、他のヨーロッパ大都市のように「後進国外国人=無教養=低所得者」という事が当てはまりにくい特異な国であろう。実際に私がここで出会った後進国からの移住者は、前提条件として彼ら彼女らが仕事を見つけて移住している場合に限るのだが、この人たちは自分の出身国ではいわゆるエリートにあたる人たちで、多くの大企業の本社があるこの国の職を勝ち取れるような実力を伴った人たちである。そのため同じ出身国であっても他の地域(パリやロンドン)で出会った人とは違った(良い)印象をこちらに持たせてくれることが多い。
物乞いなんかもいるのだが当然大半は外国人。数も限られておりいつも見慣れた顔ばかりで、逆に向こうもこっちの顔を覚えてるといった有様だ。これはやや極端な例だがこれら物乞いの中にはiPadで動画を見たり音楽を聴いていたりする奴もいる。随分と余裕がある物乞い達じゃないか。私も飛び入り参加できたりするのだろうか?

ただし最近は少しづつ変わってきている。裕福な国に移住するためには手段を問わない卑しい根性を持つ低所得の外国人が増えていて、実際そういう人たちを私自身が見てきている。この様なことを言うとたとえそれが事実であっても「外国人差別だ」とか喚きだつ自称正義の味方に差別主義者とかいう中身のない言葉でレッテルを張られそうだが、それはともかく、こういう卑しい外国人移民のせいで街の風景や雰囲気も悪い意味で変わりつつある事は事実であることを強調したい。無分別な移民の容認は国を滅亡に追い込むという考えを右翼の大げさな主張とは到底思えない。外国人と治安については後で詳しく話そうと思う。

ルクセンブルク人

ルクセンブルクに住む人たちについて話題を持ち出すときこの国の多様性という側面から外国人に目が行きがちなのだが、肝心の地元民であるルクセンブルク人についての話はあまり出てこない。面白いことに地元民であるルクセンブルク人と都心部で働く大多数の外国人はあまり接点がなく、ルクセンブルク人の友達がいないという人も多い。社会が断絶されているという言い方は大げさだが、意図的で無いにせよ両者があまり交わらないのはルクセンブルク人の特徴にも原因があると思う。ルクセンブルク人の雰囲気は国際化したドイツ人、という感じであろうか。少なくとも反対側の国境にたくさんいるフランス人の雰囲気はあまり見られない。また一般的にシャイな傾向がありドイツ人程ではないものの人見知りしやすいと思うのが私を含めたここに住む人たちの感想である。また誰も声には出さないがルクセンブルクの経済の大部分はエリート外国人によって動いている側面もあるため、彼らにはルクセンブルク中心部で働いている活発かつ国際的な中産階級の外国人に対して若干コンプレックスがあるようで、都心部での主役を演じる外国人労働者の社会に自ら積極的に入っていくことはあまりない。これがほかの国だとルクセンブルク人はあまり裕福ではない田舎民という枠に入ることになるが実際はそんなことは無くルクセンブルク人は田舎者メンタルを持ってはいるものの収入は十分であることも多く、生活の質は十分に高い。実際彼らは大学を出ていなくてもルクセンブルクの各種公務員として優先的に職に就くことができ、事務員の様な簡単な仕事であっても結構な給料を貰っていることが多いのである。(だがそれがまた有能な都心部外国人に対してのコンプレックスを助長してしまう原因になっているのだろう)

治安

治安は決して悪いとは言えないが実は良いとも言えない。基本的には暢気な田舎気質の都市であり、暴力を含む危険な犯罪はあまりないものの、空き巣やスリなどは間違いなく増えている。特に体感的に変化が現れたのはいわゆる難民問題でヨーロッパに偽装難民たちが一気に入り込んだ2013年以降だろうか。このころから毎年ルクセンブルク中央駅周辺の雰囲気が変わっていったのはルクセンブルクに10年以上住む人達の殆どすべてが同意する事実である。治安悪化については身近な例でもたくさんあり、他人から聞いたとかニュースになったとかだけでなく、私の直接の友達が被害にあったり、そして私自身(正確には私と同行していた友達)が被害にあっている。どれも窃盗や空き巣といったたぐいの犯罪だが要するにこの国が金持ちの国として知られるにつれ犯罪者や社会を利用することしか考えない寄生虫を引き寄せているのだろう。例えば中心部は物価が高いためこういった連中は郊外に住んでいるが、一度、私がよく見る物乞い達が一斉に一台の大型の乗用車からぞろぞろ出てきたのを見た。驚いたことに要はこの物乞い達は街で見かける際は判らないが実はグループだったわけでお互い仲良しこよしの同僚の関係にあるわけだ。そして私が見た光景は彼らの都心部への「団体通勤」だったという事だ。
最近ルクセンブルク中心部を路面電車が走り出したのだが、この新設されてまもない短い路線でさえ詐欺行為を働くグループの標的となった。存在しないボランティア団体をでっちあげて募金を募る若いアラブ系の犯罪者グループがいて、実際私も話しかけられたことがある。これについてはルクセンブルクにある各種のFacebookコミュニティなどでも話題として上ったりした有名な事例であるが他にもたくさんこんな類の話はある。
こういう状態になってきており、元々この国には見知らぬ他人に対しても割と温和な関係が成り立つ良い意味での田舎臭さがあったのだが、都心部に限って言うと人々が警戒心を持つようになり他人への無条件的な信頼感が消えつつある。

私にはルクセンブルクの検察官の秘書をしている友達がいたのだが、彼女によると2014年の時点で約25%程の人たちが何らかの犯罪に合っているという。この国の治安がいいというのは何も知らない人たちによる勝手な幻想だ、と言っていたのが印象的だった。たしかに他の国の大都市なんかと比べると治安はまだ良いものの、将来的には危険な地域と呼ばれるような事にはならないだろうがベルギーの様に他人に無関心な人が多く住む、雑多だが活気のある小さな都市になっていくのかもしれない。他のヨーロッパ諸国と比べてもいまだにムスリムによる自爆テロのようなことが無い平和な国なのだが、私自身が住んでいる国という事情もあるが、これからもそうであって欲しいと切に願う。

ルクセンブルクの大抵の公園には警察によって防犯カメラが空きなく設置されている。これが現状である。

経済

金持ちであるこの国の印象としては銀行が多いと言われる。銀行関連がこの国にとって大きな割合を占めている産業であるのは事実である。しかしこれについては最近変わってきており、多くの銀行が業績を悪化させたり縮小のために人員を減らしていいる事をちゃんと知っている人はどれ程いるだろうか?金融関連の企業が衰退し始めたのは2010年ほどかららしく、私自身が銀行に勤めている複数の知人から直接聞いている話でもあり信ぴょう性は高い。また、とあるルクセンブルク人の友達の父親は大手銀行で働いていたが、数年前にこの銀行で大規模なリストラがあったとのこと。理由としてよく言われるのが欧州中央銀行による金利が非常に低くなっておりこれが原因で銀行としての儲けが減ってきているのが一番大きい原因と言われる。しかし他にも租税回避地としてルクセンブルクが非難されたためルクセンブルク政府が他国からの信頼回復のため新たな規制や政策を打ち出したのだが、その結果金融業界にとって営業上のうま味が減ってきたとも。さらにもう一つはフィンテックと呼ばれる金融工学がITとともにさらに発展してしまい、効率的な金融サービスをコンピュータの力でもって提供できるようになったため。つまりその分人手が必要なくなったのも原因とされる。いまだに金融業は重要な位置を占めるが以前ほどではなく、ルクセンブルク政府としてもそれを認めているようで国内の経済構造を転換しようとしている。その一つとして目標を掲げているのがいわゆる各種学術とITのリサーチセンターが集まる国、である。国自体が小さいため人的・物理的制限から規模の経済が有効な各種重工業は発展しにくいが、一方ITを含めた各学術分野(特に理系)に関する研究所は人員が少なくても少数精鋭でやっていけるので、このような知的産業要素を国の経済の中心に据え、それをもってして経済を回していきたいという思惑でる。

ルクセンブルクはEUにとっても特殊な位置づけの国で、歴史的にも西側ヨーロッパ各国の間でスイスとはまた違った意味での中立的な役割を果たしており、その意味ではベルギーとも似ている。そういった経緯もありEU政府に関わる多くの機関がここに設立されているので当然そこで働く官僚も多くいる。全部合わせておよそ8千人から1万人程いるようだが彼らもまた高学歴かつ高給取りなので人口が高々60万人程度しかいないこの地域に及ぼす経済的効果はかなり大きい。ついでにこれらEU機関から一部業務を委託される民間企業も集るので連鎖的な経済効果もある。たとえば富士通なんかもEUのIT関連の事業を受託していたりする。

多数の国際企業がヨーロッパ本社をルクセンブルクに置く傾向があるのだが、それはルクセンブルクの税金の低さも関連していて、各種優遇策に魅了された大企業の小さな本社がたくさんルクセンブルクにはある。面白いのはこれら大企業のルクセンブルク本社は小規模であることが多く、なんと従業員が5人とかの場合もある。名目だけの本社という事であり、その目的はやはり税金回避と関連する。しかしこれらの本社で働く人たちは当然高給取りでもありこれもまた高所得者を自国に取り込むための戦略として機能している。

交通

これについて良いと言うか悪いと言うかは人によって違うだろう。しかし少なくとも車を乗り回す人たちにとっては良いとは言えない。いや、正確には悪くなってきたというべきか。もともと近隣諸国からの車通勤が多い場所なので主要な幹線道路は朝夕の通勤時間帯には混雑があった。特にベルギー国境の町からの幹線道路は渋滞することで有名だったがここ5年ほどはこの国で仕事を得る人や移住者の急激な流入によって交通渋滞は深刻といえる状態だ。私の知り合いは自宅から6キロ程度離れたKirchbergというビジネス街に車で通勤するのだが、混んでいない時なら10分弱で着くような距離なのに、場合によっては1時間ほどかかるという。これだと自転車のほうが間違いなく早く着くだろう。あまりにも混むので政府も路面電車を新たに設置したりなど、解決策を色々講じているが車の渋滞だけに目を向けるとほとんど解決してはいないように見える。またこの地域に通勤するフランス人の運転は下劣であるというのが昔からの評判だが、交通渋滞によるストレスが原因かは定かではないが、車の運転マナーは全体的に確実に悪くなってきている。渋滞する時間帯に都市中心部を歩いていても、近くの道路から聞こえるクラクションの回数が明らかに増えている。

公共交通機関はそれほど悪くなく、都心部に限って言うならば割と便利であると言えよう。特にバスは至る所に走っており渋滞に巻き込まれると延滞が起きてしまうとは言え、上手に使いこなすと便利だ。また上記のように路面電車も走り出しており、まだ計画の一部区間だけしか完成していないがその区間だけで先行運転を始めており利便性はさらに高くなっている。さらに料金はルクセンブルク国内なら基本的に同一料金で、例えば2時間で日本円にして300円ほどだろうか、とにかく日本と比べると非常に安くつく。公共交通機関というのは人の生活にとって死活問題に関連するので、このような政策については日本も言い訳なしで見習うべきである。
ただルクセンブルク郊外になると話は別だ。都心部と比べるとずっと路線バスも少なくなり車が必要となってくる。また都心部はバスや路面電車が便利に使えるといったが、最近は人口が増えてきていることもあって混雑時のバス車内や路面電車内は窮屈で乗り心地良いものではない。そしてスリや変な客に遭遇する確率も高くなりストレスも感じやすくなってくる。

試験運転をする路面電車

言語

この国は歴史的な背景も重なり複数の言語を話せる人が多い。ルクセンブルクで育った人ならルクセンブルク語はもちろん大抵はドイツ語、フランス語も話せるし、さらに通常は英語も話せるので最低でも4か国語話せるといった感じである。正確に言うとルクセンブルク語はドイツ語の強烈な方言とも言えるので、そうするなら3か国語を話せるといったほうが良いかも知れないがそれでもこのような多言語が普通となっている国は珍しいであろう。そもそも公用語がフランス語・ドイツ語・ルクセンブルク語の3つなので、これらを話せて当たり前、という感覚である。さらに前述のようにポルトガル人やイタリア人の移民が多かった背景からこれらの言語が話せると就職に有利となるので5か国語とかができる人もいたりする。一応言語学的な視点で公平に言っておくと、これら言語のすべてはヨーロッパ言語(更に広く言うとインド・ヨーロッパ語族)なので、すべてに言語的な共通性があり、例えば似た単語も多いし文法もよく似ていたりする。フランス語が分かればイタリア語やスペイン語も取得しやすい、さらにポルトガル語とスペイン語はかなり近い。どれもロマンス系の言語だからである。一方ドイツ語は英語と姉妹関係にある言語である。なので日本人が文法も単語もすべてが異なる英語を学ぶことに比べたら比較的楽に習得しているので、5か国語わかるからと言って日本人が英語を習得する際の5倍の労力がかかっているわけではなく、日本人とは頭の構造が違うとか考える必要はない。

知り合いのルクセンブルク人が言っていたが、多言語を喋れるからといっても必要に迫られたため習得しただけであって、大抵のルクセンブルク人は好き好んで多国語を学んでいるわけではないとのこと。地元のルクセンブルク人にとっては子供のころから学校で強制的に学ばされたりと、あまり良い思い出には繋がっていないことも多いらしく、何も知らない外部の人達からするとただ「凄い」で終わるが、実際にこの国で育ってきた彼らは実生活の中での多言語環境に苦労をしてきたようだ。

小さなミュンヘン

この国に似た国はスイスやシンガポールがあげられる。いずれの国も重工業はあまり発展していないが金融業や多数の国際企業の本社、学術関連の研究所などが有名でありこれらが経済の中心にある。また国際的な国でもあり外国人の出入りが多い。しかし国という単位でなくもう少し違った視点で見ると私には規模が小さくなったミュンヘンという印象だ。統計上では上記のような国が比較対象になるだろうが実際にこれらの国に行って実際の生活上の雰囲気を感じると似ているようで似ていない部分も多い。
ルクセンブルクはドイツとフランスの影響を受けた小国であるが上でも言及したように文化的にも性格的にもドイツ人に近く実際ドイツ語も普通に話せる。ミュンヘンは国ではなく州だがEU圏内では経済的には最も裕福な地域の一つとされているのでその意味でもミュンヘンとルクセンブルクはよく似ている。どちらも目を見張るような観光資源があるわけではないが、住環境の質はとても高く適度に都会的でありながら自然も豊かであり、さらに治安も良いので実際に住んでいる人たちには好評だ。
食べもに関しても既に述べたように土着料理はドイツの田舎のものとほとんど変わらないので不味くはないが特筆して美味いものでもない。その一方、中流階級の外国人が多く住んでいるため都心部では各国の料理を楽しめるのもミュンヘンと似ている。この小さな国であっても主要大都市に飛べる空港があるのも見逃せない。人口が多くない割には機能的な国際空港があり、さすがに日本までの直通路線はないが利便性の高いヨーロッパ大都市向けの路線が多いため世界の主要な国には1回の乗り換えで行けることが多く、地方都市的な国であることを考えるとこれはとても便利だ。
どちらの地域もEU圏内の人なら制度上は自由に移住できるが、実はこれが簡単なことではないという事実も両地域に共通している事だ。というのは良くも悪くも資本主義が機能していて、どちらも経済力の高い地域なので十分に稼げる仕事がないと家賃そのものが払えない。ニューヨークや東京都心の一部のようなあからさまに現実離れしたような金額ではないにせよ、ミュンヘンもルクセンブルクも家賃は非常に高く現在もジリジリ上がっている状態である。よってEU内の移動の自由がたとえあったとしても面白いことに「仕事のための十分な能力がない人=つまり十分な給料を貰えない人」はミュンヘンやルクセンブルクに旅行者または域外からの通勤者として訪れることが出来ても住むことはできないという状況に直面し、皮肉もこの資本主義的経済のおかげで無能で卑しい者はEU圏内の国民であろうとEU外からの外国人であろうとルクセンブルクに近寄ることがそもそもできず、その結果、ルクセンブルク政府が何らかの「ならず者排斥政策」を取らずともこの資本主義経済が犯罪者予備軍や社会的寄生虫の流入に対する一定の抑止力として作用しているのである。

ルクセンブルクという国の特色を、実際にに生活している私の視点からザックリと説明してみたが、このように「小さいミュンヘン」という表現が私にはしっくりとくる次第。
当然時間がたつにつれ事情も少しずつ変わると思うのでその際はこのページを更新しようと思っています。

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