家庭用食洗器について

最近日本でも少しずつ使われ始めている食器洗浄機について書いてみたい。家庭用の食器洗浄機は昔から日本にあったと記憶している。20年以上前、私が子供だったころに両親が新築を立てそこへ引っ越したのだが、そのキッチンには食器洗浄機があった。一方、子供であった私からの視点ではあるが、その食洗器が我が家に必要不可欠な物であったと認識されたことはなく、事実私の両親も初めのうちはよく使っていたがそのうち使わなくなっていった。理由は一つではないはずだが、思うに一番の理由は食器洗浄機自体が小さいので一度に洗える量がとても少ないからだと思う。次の理由は食器の洗浄が終わるまでにやたらと時間がかかることか(最低1時間はかかる)。少なくとも子供のいる家族では以前の小型家庭用食洗器はあまり役に立たなかったであろう。ただ最近は食洗器の性能向上に加え食洗器を実際に使う便利さの再評価が起こっているようだ。そのため欧米諸国では普通に使われている食洗器についての実際のところをお伝えしたいと思う。(最近は洗濯機も欧米でよく使われるドラム型が流行っているようだがこれについてもまた書きたいと思う)

食洗器の歴史を覗いてみると原型はアメリカで発明されその後アメリカとドイツの企業が発展させていったようだ。特にドイツのミーレの商品が世界的にも有名であろう。ヨーロッパではシーメンスもしくはボッシュが中モデル以上のものとして人気がある。次はAEGや韓国製サムスンであろうと思える。ミーレは有名だが値段の割には実用性の点ではシーメンスやボッシュと大して変わらないというのが私の意見だ。ミーレはこっちで買っても高いが(最低でもは700€前後はする)日本だと馬鹿みたいに高く(日本だと最低20万ぐらい?)この価格設定は意味不明すぎます。シーメンスやボッシュであっても低価格モデルは400€(2019年5月の時点で日本円で約5万)ぐらいからあり、これでも日本で買う10万前後で購入できる食洗器の3倍ぐらいの価値はあると思う。実際ヨーロッパのほとんどの家庭ではこの低価格クラスのものがほとんどを占めており、食洗器ごときに500€以上出すのは無駄な出費と考える人が多いと思う。そしてこの程度の値段のものでも機能的には全く問題ない。

Mieleの食洗器。価格が尋常じゃない。www.miele.co.jp
これは私の家に入居前からあったシーメンス製の食洗器。おそらく10年以上前のものだが何も不満はない。

日本では据え置き型のものが結構売れているようだがヨーロッパの家庭ではほとんどビルドイン型。あと幅は45㎝と60㎝の二つが一般的だが(というか私の知る限りこの二種類しかない。ビルドイン式なので互換性を考えて全メーカーが統一しているのだろう)通常は60㎝で、一人暮らし用の小さなアパートの場合に限って時々45㎝を見かける。確かに日本では家が狭かったりするので据え置き型を選ぶ人がいるのは分かる。またビルドイン式は値段が高いし借家だと工事する必要もありそんなことは気軽にできない事を考えると据え置き型の需要も大きいのだろうが、ヨーロッパで少しでも生活して食洗器に慣れてしまうと日本の食洗器の機能が中途半端なのに気づくと同時にそれでも食洗器の便利さを知っているので買いたくなってしまうだろう。実際に私の友達もヨーロッパから日本に戻っても食洗器を使いたいと言っていた。
スペースを考えるとビルドイン式は若干大きく感じるかもしれないが、ほぼ間違いなくそれを上回るメリットがあるので家やアパートをを購入したのならぜひ60㎝幅のビルドイン型の食洗器を追加することをお勧めする。一方最近の据え置き型は二人暮らしまでなら何とか役に立つサイズで、かつ値段もそれほど高くないので子供がいないのなら十分その便利さを享受できると思う。

なぜかは知らないが日本ではボッシュやシーメンスなどの大手は食洗器を販売していない。どうやら以前は販売していたこともあったようだが今は売っていないようだ。
最近は日本でボッシュが代理店を通してまた買えるようになったようだが、最低でも20万弱程する。他にはミーレがヨーロッパメーカーの食洗器として選択肢に入るが異常に高い。正直言ってここまで高価になる理由がわからない。先ほども言ったがヨーロッパでは400€(5万弱)でも10年は使えるようなものがボッシュやシーメンスから買える(でもなぜか日本ではこの価格では売ってない)。ほかにもそれほど有名でないメーカーからも売られているが、そういう製品でも十分使える。
一応ミーレについては庇護しておく部分もある。この会社はドイツでは就職したい会社の上位ランキングに入っていることが多い。理由はブランドバリューであろうが、実際にその基礎となるような製品を世に送り出してきたのも事実である。個人的な見解ではこの会社の技術が最先端かつ誰にも真似できないようなレベルのものとは思えない。最先端技術という意味ではボッシュやシーメンスの様な巨大ハイテク企業のほうが源泉技術を色々持っているはずである。しかし可能な限り自社ですべてのパーツから作りたがり、常に新しいこともやってみるという姿勢は評価されるべきで、ミーレは他社に先駆けて新機能を開発することが多いと思う。日本の家電もミーレ商品を真似たような商品を出している。日本製品しか知らない日本人には比較がそもそもできないから気が付きにくいと思うが特にPanasonicの白物家電の上位機種は明らかにミーレを意識していると思う。てっきりPanasonicが始めた新機能と思っていたらすでにミーレがやっていたという事もある。洗濯機の自動洗剤投入機能とか。

話を食洗器に戻そう。しかし何故日本メーカーが積極的に日本市場に売ろうとしないのかよくわからない。日本人が買ってくれないのだろうか?でも私でもあんな小さな食洗器は買わないと思う。日本の家が狭いという事情も挙げる人もいるかもしれないが、ウサギ小屋などと言われるほどの小さい家が多かったのは戦後の高度成長期時代で、人口が爆発的に増えているときの話であって、都心であればヨーロッパ諸国のアパートだってそんなに大きいものではない。食洗器は日本人にとっても間違いなく便利なものである。

それはともかく食洗器の有用さについて疑問を持っている人もいるかもしれないので私の経験談も含めて話してみよう。

大きさ

食洗器の大きさについては上で言った通り大きければ大きいほど良い。欧米で一番普及しているであろう60㎝幅の食洗器なら、たくさん入るわけではないがフライパンやそこそこ大きな鍋も入る。またこれは洗浄能力にも関することだが、極端に汚い食器でないならとりあえず食洗器内を飛び回る洗浄水に触れることができれば十分なので、例えば大きなフライパンを入れたとしてもそのフライパンの下側に小さな他の食器などをいくつか入れることができ、またそれでもちゃんと洗えることが多い。使い始めの時は意外と大きな食器を入れることができ驚くことがあった。もしデメリットを言えば食器をパズルのような感覚で上手に入れる必要があるのでそれに時間がかかってしまう事がある。ただそれは大した問題ではないが。

洗浄力

これが一番気になるところだろう。日本に行く際は友達との会話中にふとしたことで食洗器の話題に移ることがあるのだが、特に男性と食洗器について話すと、やはり男性諸君はどこの国でも女性と比べて技術的な話題にすぐ関心が向くようで何かしらの持論を展開する。そして家庭用食洗器について話をすると彼らはたいてい洗浄能力に対してあまり期待をしていなことが多い。しかしそれは頭で考えるだけではなく、使ってみればすぐにわかることである。実際に使ってみて一番驚かれるのはこの洗浄力であると思う。家庭用食洗器の洗浄力が弱いと考えられる理由の一つに食洗器は水圧で食器を洗っているという勘違いがあると思われる。無論水圧が大切ではないと言っているわけではなく、例えば業務用食洗器では水圧はその性能を評価する際の大切な要素であるが家庭用食洗器に強力な水圧ポンプを設置するスペースはなく、たとえできたとしてもそもそも家庭用食洗器では静かさや手軽さが大切なので、業務用食洗器とは使い方に違いがあり、そのため水圧はそれほど大切ではない。同じ食洗器でも業務用だと食器をラックに並べて、それを一段分だけ食洗器に入れ洗浄する(家庭用食洗器は通常2段、もしくは3段ある)。そして洗浄時間は通常3分以内で早いものだと1分弱だったりするが、こういう洗い方をする際には水圧の大きさが非常に大切になってくる。そして流れ作業に特化されており汚れた食器が並べられたラックを次々と食洗器にセットして洗っていく。一方家庭においてはそんな面倒な流れ作業的な事をしたくないのが普通であろうし、そもそもその為のスペースもない。なので家庭用食洗器では可能な限り食器を詰め込んで一気に全部洗う、という使い方が前提となった設計がされているのである。では家庭用食洗器では何か肝となっているのであろうか? それはまず洗剤、次に温度、その次が時間、そして最後に水圧である。
食洗器用の洗剤と手洗い用の食器洗剤の洗浄力は桁違いでありこれが一番予想外の部分であろう。食洗器用の洗剤にとって表面活性剤はあまり大切ではなく、実際洗浄中は庫内の洗浄水はあまり泡立たない。大切なのはアルカリ性洗剤であり、これは油脂やたんぱく質を強力に分解することができる。そのため手洗いの様な擦るといった作用はそれほど必要ではなく、汚れの面に継続的に水流が当たり表面上を軽く攪拌するだけで十分なのである。
さらに通常はどの食洗器も60度以上の高温の水流を使うのでアルカリ性になった洗浄水の効果が更に大幅に強化される。どんなに洗浄水が強力でも豚肉や牛肉の様な常温で溶けにくい油脂は分解反応に時間がかかってしまうのだが60度以上になるとほとんど解けてしまいそんな問題は解決される。100度と比べると60度はそんなに熱く思わないかもしれないが実際は火傷を負う温度。
家庭用食洗器は水圧が強くない分その弱点を洗浄時間で解決している。物理的に水圧で吹き飛ばすのは諦める代わりに、高温の強化アルカリ洗浄液を長時間じっくりと汚れと反応させるという戦略なのだ。さらにこのようにじっくりと時間をかけることで込み入った隙間にも洗浄液が届きやすく、複雑な構造をした食器や調理器具であってもふつう手洗いではまず物理的に擦り洗い出来ないような狭い箇所まで洗浄できる。そういう意味ではこの長時間洗浄は高圧短時間洗浄には無いメリットであるとさえ言えよう。食洗器を使うと手で洗うより綺麗になるとたまに聞くが、これは大げさな表現ではなく本当の事である。皿の様な平たいものならそれほどの違いは分からないかもしれないが、取っ手のついたカップのようなちょっと洗い難い形状のものはもちろん、金ザルや複雑な形状の鍋のふたなどが油でギトギトになっていたとしても、手洗いでは不可能なレベルまでCMの如く本当に隅々の汚れを落としてくれる。乾燥して固くなったご飯のこびりついた茶わんなども見事に綺麗になる。次のような洗いにくそうな食器や調理器具を食洗器で洗い、初めてその洗い上がりを見たときは感動する人も多いのではないだろうか。

さらに手洗いでは無理なことがある。それは前述の高温+強アルカリ洗浄で可能なことに殺菌とタンニン落としがある。強力なアルカリは漂白剤と似たような作用を発揮するのでコーヒーやお茶の茶渋は見事になくなる。また高温と相まっての殺菌作用も見逃せない。

洗浄力については褒めちぎってきたが無論苦手な種類の汚れもあるようで、強くこびりついたタンパク質系の汚れと炭化物つまり焦げ付きはそれほど得意ではないらしい。タンパク質系とは具体的に言うと陶器や鉄のフライパンに強くこびりついた卵や魚、肉である。ただあくまで強くこびりついた時だけであるので薄く膜を張った程度の汚れは普通はきれいになるので心配無用である。炭化した焦げ付きは強アルカリや高温であってもほとんど反応のしない種類の汚れであり、こればかりは高水圧での物理的な方法が一番良いのだが残念ながら家庭用食洗器は前述のように水圧が弱いため焦げ付き汚れは残りやすい。それでも全く洗浄効果が無いわけでなく、食洗器で洗浄後に手洗いで再度擦り洗いをすれば比較的簡単に落ちやすくなていることが多い。

以上のような感じで、完璧でないにしても食洗器の洗浄力は非常に強力であり、手洗い以上にピカピカになるというのが実際のところである。

洗える食器

日常使う食器はほとんど洗えるが、一部の食器は洗わないほうが良いのも事実だ。問題が起こる原因は強アルカリ洗浄による部分が多く、例えば木製食器は表面塗装が食洗器対応でない場合は洗わないほうが良いだろう。もちろん漆も洗わないほうが良い。アルミニウムも強アルカリには弱く、光沢が簡単に失われてしまう。しかし耐腐食処理がされていて食洗器対応のアルミニウムであるならば問題ないし、テフロン塗装のフライパンの一部のアルミニウム部分がむき出しであったりする場合はその部分だけはゆっくりと腐食するが、肝心のテフロン部分が使い物にならなくなって買い替えるのは2年程度なのでそのままゆっくりと腐食させても実用性に問題はなく、私はそのように割り切って食洗器で洗っている。(ただし自己責任で)

乾燥

日本では食器乾燥機というものが売られているようでこれを初めて見たときはこんなものがいったい何の役に立つのかな?と思ってた。食器乾燥機なるものは欧米の家庭では見たことがないが、それは単に必要ないからである。欧米で標準的に使われているほとんどの食洗器には乾燥機能があってもほとんど助けにならない。ではどのように乾燥させるかというと洗いたての食器は高温になっているので食洗器のドアを開ければもうもうを水蒸気が上がり(眼鏡に注意。アニメの女湯のぞき見状態になります)、食器についた水分は一気に蒸発するのでそのまま5分程度たつと食器の形状にもよるが表面積の9割以上が乾燥した状態になる。また食洗器のドアを開け忘れても数時間後にはほとんど乾いている。複雑な形状の食器などは若干水が残ることもあるが神経質でなければ気にならないであろう。たいていは軽く振って残った水滴を飛ばした後そのまま食器棚にしまっても問題ない。

維持費

これはほぼ間違いなく手洗いよりも安上がりなるはずである。食洗器の節水性能は素晴らしく、高温になった洗浄液で洗うのだが洗浄中は基本的に同じ洗浄水をただ庫内を循環させるだけなので流し捨てることがほとんどなく、せっかく温まった温水を効率よく再利用し続けるので、冬の手洗いの時のようにお湯を垂れ流しにすることがない。機種にもよって違うが、何と一回の洗浄サイクルで9L程度の水しか使わないのである。電気水道代だけ考えるならば電気を多く消費する湯を洗浄の際に使用するとは言っても、冬を含めた一年間で考えると間違いなく手洗いと比べて安上がりであろう。では洗剤はどうか?これも大した金額ではない。アマゾンなどの通信販売で探せばいくらでも安いものが見つかるであろう。せいぜい一回の洗剤代は5円から10円の間である。

これ以上の数の汚れた食器がほぼ完ぺきに洗いあがる。しかも殺菌もされる。

洗える食器の種類を少し考慮したり、洗浄時間に時間がかかるなど、決して良いこと尽くしであるとは言わないが、それを上回る利益がある。肌の弱い人は間違いなく手荒れが改善されるし、脂ぎった料理をした後の億劫だった洗い物について何も考えなくてよいので料理を作ることだけに集中すればいい。自宅でのパーティーの後に黙々と一人で皿を洗わなくても良い。角田光代が書いた「料理」という笑えるエッセイがあるのだが、そこでの一番の問題点である洗い物も食洗器があれば見事に解決である。その意味では家族暮らしでなく仕事から帰って疲れている一人暮らしの人であっても食洗器はかなり活躍してくれるであろう。特に冬場の夜の皿洗いは非常に億劫だがそれから解放されると想像してみてほしい。それを経験した後は食洗器なしの生活は想像できなくなると言っても大げさではない。

4件のフィードバック

  1. こんにちは!正確な意見が書かれていて、すごく面白かったですし勉強になりました。私も今のボッシュ45cm導入する前に、海外との価格差をみてビックリしました。国産のは食器が本当に入らないと思います。海外なみの価格で販売されたら、国産メーカーの食洗機は全滅に近くなってしまうでしょうね。。。ほんとに高すぎます。顛末はブログに書いてあります。でわでわ!

    1. こんにちは、確かに日本の食洗器は異常に高いと思うので欧米のノウハウを持った会社が日本向けに量産すると日本メーカーの食洗器は一掃されてしまう気がします。現代においては食洗器なんて決してハイテクな製品ではないので日本での価格は理解できません。日本メーカーの怠慢なのか、技術が無いだけなのか・・真相は不明ですが😅
      てらぴさんのブログも拝見しました。面白かったです😃

  2. コメントのお返事いただいたのをわからずすみませんでした。私のブログにリンクを貼っても大丈夫でしょうか?

コメントを残す

送信完了しました。

確認用メールが届きますのでご確認ください。届いていない場合はメールアドレスの間違い、もしくは他の理由での送信失敗の可能性があります。お手数ですが再度送信してください。

お問い合わせ

  • 確認用メールが届きます。何も届いていない場合は迷惑メールに入っていないかご確認ください。もしくは記入されたメールアドレスが間違っている可能性もありますので再度送信ください。
  • 中傷メールやスパムメールは自動的にはじかれることがあります事をご了承ください。