ルクセンブルクは超裕福、は本当か

嘘ではないけど、本当でもないです。
なんて書き方は焦点がずれてる気がするのでやっぱ無し。

「世界一裕福」とか「一人当たりGDPは日本の2倍以上!」と言う表現が与える強烈な印象を考えると率直に言って「嘘」である。
これは実生活からも体感できるし、統計情報からも見えてくる純然たる事実。ただ厄介な連中がいて、彼らがこの嘘の拡散に一定の役割を果たしていることに気がついた。

とりあえずは客観的な話で決着を

まず経済指標に関する統計の話になるが、ルクセンブルクが世界一、(もしくは年によって変わるがそれでも上位10位に入る超高所得者の国)と言うのは一人当たり国民総生産という経済学的な統計算出方法がルクセンブルクという国の特殊な経済動態を上手く反映できないものからくるのである。
決して国民総生産の算出計算式が無価値なものと言っているわけではない。しかし「国」という単位で計算する事を前提にしている限り、このマクロ経済学で有用な分析視点はルクセンブルクのような特殊な国に対してやや問題ありということになってしまう、という事。

一番の問題点はルクセンブルクにはドイツ、フランス、ベルギーからの越境労働者が非常に多いということだ。ドイツはTrier周辺、フランスはMetz周辺、ベルギーはArlon周辺がルクセンブルク国境と接しており、また実際に伝統的にもこれらの地域は「Great Region」という呼び方で一つの纏まりののある経済域とされてきた。東京で働いている人全員が東京に住んでいないのと同じであり、国境を越えたルクセンブルクへの越境労働者は昔から多く、とにかくこの部分が無視できないほどの影響を統計に与える。今簡単に調べたが2021年の時点ではなんと46%の労働者は越境労働者である。

There were 209,014 cross-border workers in Luxembourg at the end of the first quarter of 2021. This constitutes about 46% of the country’s workforce, with approximately 110,195 living in France, 49,796 in Germany and 49,023 in Belgium.

引用元媒体 – Luxembourg times

しかし一方、一人当たり国民総生産を計算する際はその国の国民だけで計算するので(要するに越境労働者数は無視されてしまう)、実際の値よりも2倍近くなってしまうのだ。無論これは丼勘定で、例えばルクセンブルクには銀行が多く、また国際的大企業のEU域本店が数多くあり、これもまた必要以上に一人当たり国民総生産を押し上げる原因にはなっている。しかしとにかくこの越境労働者の割合とその影響は到底無視できるレベルではなく、これがルクセンブルクの見かけ上の一人あたり国民総生産をだいぶ嵩上げしている。

そうするとこの丼勘定で計算してみよう。世界銀行の統計では2020年(これが2022年現時点での最新集計)では一人当たり国民総生産(2022年3月19日でのドル計算)は次の通りだった。 このまま解釈するとルクセンブルクは日本の2倍どことか3倍近くの所得を得ていることになるが・・・
とりあえず上の説明のようにルクセンブルクだけ46%減にするとこうなる。

ルクセンブルク 116,014 →  62,647
日本 40,193
アメリカ合衆国 63,593.4
イギリス 41,059 
ドイツ 46,208

あらら。見ての通りアメリカとほぼ同じになり、日本と比べても1.5倍程度にしかならない。しかも忘れてはいけないのがこれらは国の平均であり、日本なら東京、イギリスはロンドン、ドイツはミュンヘンだけに注目すると、これらの地域はその国の平均値よりずっと高い。たとえは東京は日本の平均よりも3、4割高いし、港区のような地区になると日本平均の2倍以上とかになるんじゃないかな。
するとロンドンや東京の中心部に家を持って住んでいる人がルクセンブルクに来ても物価や生活費は大して変わらないと感じるであろうし、こういった大都市に住んだり長期滞在した経験のある私自身もそう感じるのである。

次に欧州委員会というテクノクラートたちが集う機関で2021年にAIC(actual individual consumption)という説得力ある概念の下で次の様な結果を発表した(分析対象とされた資料は2007年のものだが十分価値がある調査結果である)。これもさっきの私の出した修正案に似た視点で持って指標を出しているが、細々とした説明がやや面倒臭いので興味のある方は直接レポートを見ていただければ良いと思う。とりあえずAIC指標で見た場合はルクセンブルクは裕福な国である事には変わりないがそれでも他の欧州先進国の2倍とかではないということがはっきりしている。
またレポート何にあった次の注釈も私の視点とよく似ているので紹介しておきたい。

Luxembourg: The high GDP per capita in Luxembourg is partly due to the country’s large share of cross-border workers in total employment. While contributing to GDP, these workers are not taken into consideration as part of the resident population which is used to calculate GDP per capita.

引用元媒体 – Eurostat
AICという指標で評価するとルクセンブルク経済への見方が劇的に変わる

以上、見ての通りルクセンブルクは他の西欧先進国のと比べて突出して裕福であるわけでは無いことが明らかになったと思う。さらに他の記事でも書いたが、「国」という単位ではなく「州」や「経済圏」といった視点で比較するとルクセンブルクよりさらに高収入な地域が世界中に相当数ある。よってルクセンブルクが型破りな裕福国であると言う表現は虚像、もしくは真っ赤な嘘であることがわかっていただけると思う。

勘違いを助長させる残念な人たち

ルクセンブルクの公務員は高級取りで、「さすが世界一のの金持ちの国😱」という文脈で喚き騒いでいるというルクセンブルク在住の日本人がいると聞いた。これもまた頭の悪いお上りさんの成せる発想であるが、こういう嘘を平気で信じてもらっても困るのでここで説明したい。
私の親しい数人のルクセンブルク人はルクセンブルクで公務員をしている。また日本で公務員をしてる知り合いもいる。常識的になんとなく想像はついているのだが、客観的な情報もあるのでそれを見ると東京の公務員の給料と同レベルの経済水準にあるルクセンブルクの公務員が特筆するほどの高給取りかどうかは自明である。ちなみに比較対象としてパリも比較対象に入れてみたがこれもまた然り。

知的能力が低いものに対してどんな引用を出したところで無価値ではあるが、かと言って何も引用を出さないとこういう馬鹿に限って自分で調べずに大騒ぎするので簡潔に紹介したい。

たとえはパリはこんな感じで、高収入になりやすい長期勤続年数者などの平均値(最高値で無くあくまで平均値である事に注意)で9万ユーロを超える。

Salary Range
Government and Defence salaries in Paris range from 31,900 EUR per year (minimum average salary) to 94,100 EUR per year (maximum average salary, actual maximum is higher).

引用元媒体 – http://www.salaryexplorer.com

ニューヨークやロンドンもだが、スイスや北欧の公務員の給与も調べてみてほしい。情報が古くなっては意味がないのでリンクは貼らないが、調べればすぐに平均年収などが出るはずである。

勘違いしてはいけないのがルクセンブルクでも公務員は初任給からいきなり月給で7000ユーロとかはもらえないのである。大抵は学歴にもよるが5000ユーロ前後であろう。そんでもって民間企業の場合は職種にもよるが初任給は4000から4500ユーロ前後なのでそこまで開きがあるわけではない。

例外としてルクセンブルクでは公務員、特に教育関係者の給与が非常に高いと言うことが有名である。勤続年数にもよるが平の教師であっても20年ほど働いていると年収が10万ユーロを超えることも珍しくないと言う。確かに知り合いの中にもルクセンブルクで先生になりたいと言う人が何人かいたが聞くところによるとかなり競争率が高いそうだ。なるほど、たかが教師という割には安定した身分でそこそこの給与がもらえるならば誰もが教師になりたいと思うであろう。ただ注意しないといけないのはあくまで教育関係者がやたらと給与が良いだけであって全てのルクセンブルク公務員がそういうわけではない。例えばイタリアは先進国というにはお粗末な部分が多い国だが国会議員の給与額や年金額は先進国中でもかなり上位にあり国内からかなり批判されている。なのでルクセンブルクでの公務員の給与が良いというのは国の経済力とかには関係なく、一種の既得権益の様なものと考えるべきであろう。

話を少し戻すと、ルクセンブルク在住の一部の日本人のように、東京都心部でならそれほど難しくない高々日本円で1000万円前後の年収で高級取りとか言ってる事自体がその人の能力値の低さと惨めな過去を示しているというだけであり、付随するお粗末な統計読解力が原因で「ルクセンブルクやばい」などという戯言を各種Web媒体で垂れ流していたりする様だ。初めてエロ雑誌を見たクソガキの興奮と似たような状態にある彼らなりの解釈を聞かされているこっちは失笑する以外に対応のしようがなく困ったものである。
なのでルクセンブルクが裕福どうのと言うのは実に大袈裟な貧困層的見方である。統計もまともに読めない、脳の数学的能力に欠陥があり、己の低能が原因の低収入という事実が引き起こしている精神的問題からくる奇妙奇天烈な個人的解釈を、日本の常識、世界の常識の様な物言いで喚き散らしてもらっては困るのである。本人はそれが嘘だとさえもわからずに本気で信じているからなおタチが悪い。そのくせプライドだけは超一流だったりする。馬鹿ほど救いがないので困ったものだ。

そういえば最近近隣のドイツの観光地に遊びに行った際、目的地に行くバスがなかなか来ないので暇つぶしを兼ねて同じバスを待っていた一人旅らしき男性と話していた。ベルリンから来たらしいがドイツ人ではない様で、アラブ系か南寄り東ヨーロッパなどの後進国からの留学生もしくは移民であることは彼の容姿や英語のアクセントからすぐわかる。私がルクセンブルクから来たことを知るとすぐさま「ルクセンブルクの給料は良いんだよね」と間髪入れずに聞いてきた。ルクセンブルクの客観的事情を知らない、社会統計や数学的能力のないこの様な連中が勝手にルクセンブルクに幻想を抱いているのは山ほど見てきたが日本からのテレポート組(ヨーロッパ人との婚姻ビザのおかげで転生してきた実力の伴わない人たち)にも男女関わらずこの手の連中がとても多い。そして勝手に興奮して出鱈目を撒き散らしているので、彼ら彼女らのルクセンブルクに関する言動に対しては少々注意が必要である。

・・・どうせ上記のAIC指標の図もこの記事からコソッと盗んで、まるで自分が見つけたかのように垂れ流すんだろうなぁ。ん?君のことだよ😄

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